北京の街は、中国の他の都市に比べると、とても分かりやすい。皇帝の命に従って人工的に作られた街なので、メインストリートは東西南北にまっすぐに走り、方向が簡単につかめる。街の作りは分かりやすいうえ、知っておくと、歩く時に便利、そして北京により親しみがもてる。今回は題して「北京のトリセツ」、北京のおおまかな作りと歴史を出かける前に簡単に頭に入れよう。
北京の街の作りを知るのに、なんといってもキーになるのは、故宮。1420年、完成した故宮のまわりは、かつては城壁が取り囲み、1960年代まで、残されている。古い北京っ子のなかには城壁にのぼり、その上で遊んだ記憶を持つ人も少なくないほど。街の交通の障害になるからという理由で城壁が撤去されたのは、1960年代~70年代。その上に、新たに移動の大動脈として第二環状線が築かれている。
地元では「ニ環路」(アル・ホァン・ル)と呼ばれる第二環状線は一周約32キロ。城壁がある時代は、城壁の外は農地や住む人もいない荒野だったので、北京のオールドタウンは、この第二環状線の内部のみ。山の手線一周が約34キロなので、北京のオールドタウンは山の手線一周とほぼ同じ、と覚えておくといいだろう。オールドタウンは、故宮の周りに胡同と呼ばれる昔ながらの横丁がタテヨコの碁盤目に広がり、昔ながらの灰色の平屋が並ぶ素朴な雰囲気を残すエリア。ところどころに小さな食堂や市場もまだ残っている。北京の古都の情緒を楽しみたい人は、なるべく二環線の内側のホテルをとり、周囲の古びた横丁を歩き回ったりするのもいいだろう。
この第二環状線の外側に、1994年、第三環状線が完成している。第三環状線は一周約48キロ、このエリアは、かつての広大な空き地を利用していまでは高層ビルが建ちならぶモダンエリア。オールドタウンは第二環状線、モダンエリアは第三環状線、と対比のイメージで覚えておくと便利。
万里の長城など、郊外の遺跡をのぞくと、観光客が移動するのは、ほぼ第三環状線の内側まで。その外に、いまでは第四環状線(約65キロ)第五環状線(約99キロ)、オリンピックまでには第六環状線(約130キロ)の完成が予定されている。ドーナツ状にどんどん拡大する北京、ただ第二環状線から外に出るとそこはすべてモダンなエリア。北京のモダンな表情をみたい人は第三環状線に沿って回るバスなどで一周してみるのも楽しい。また、細い横丁が多く、道路が渋滞しやすい第二環状線内部のオールドタウンに比べ、第三環状腺沿いは、移動には便利。北京市内の移動が多い旅なら第三環状線沿いを選ぶなど、ホテル選びにも注意したい。
第二環状線と第三環状線の区別を覚えたら、今度は東西と南北の重要なラインを覚えておきたい。東西に走る道路のなかで、なんといっても重要なのは「長安街」。天安門広場など重要な空間はこの通り沿いに並んでいる。オリンピックのマラソンコースも、天安門広場のスタート地点を出て、まず走るのはこの大通り。いまでは地下鉄一号線がこの通りの下を走り、東西の移動も便利になっている。この通りについて覚えておきたいのは東と西の地域性の違い。北京では空港に近い東側は昔から外国に関係のあるエリアで、大使館、報道機関、外資系オフィスビルなどが多い。西側はローカルエリアで、大学、政府機関、軍関係の施設などが集中するエリア。東と西に違いは歩く人の感じや建物の感じなどにも微妙に出ているので、散歩のときは注意してみよう。
そして最後に北京の最も重要なラインとして意識しておきたいのは、南北に街を貫く中軸線。特に通称のようなものはないが、実はかつての北京の街は、故宮の中心をタテに貫く1本の線のうえに、左右対称に造営されている。このタテの線の延長上に、景山公園や鼓楼、鐘楼が並び、鼓楼の上にのぼると、景山公園までまっすぐ続く地安門大街に街の中心となるラインを見て取ることができる。
オリンピック関連設備も実はこのタテのラインの延長上に作られていて、北京ではいまでも明代から続くラインが街作りのうえで重視されていることが分かる。自然発生的にゴチャゴチャした街ではなく、街作りにはっきとした意志があり、そのために線がクリアで分かりやすい北京。観光の時には、2本の環状線と東西、南北のラインを頭に描きつつ、歩いてみるともっと楽しくなる。